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読書メモ  上田恵介「一夫一妻の神話」「♂♀のはなし」

 鳥撮りに出られぬ日々を読書でなぐさめている。小説にあきて本棚の隅にあった「一夫一妻の神話・鳥の結婚社会学」と「♂♀のはなし・鳥」の本を取り出し再読した。どちらも、大学教授である鳥の専門家の上田恵介著であり、「♂♀のはなし・鳥」は、前著の姉妹編として書かれたものである。そのエッセンスの一部をメモする。

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*一夫一妻の鳥~世界には、8600種の鳥が棲んでいるが、その92%が一夫一妻の配偶関係をもち両親でヒナを世話する。人間である私たちは、巣に両親がいるのがあたり前のように思いがちだが、鳥以外の動物の社会では両親そろって育児する方が稀です。多くの哺乳類は子育てをメスに任せっぱなしです。爬虫類・両生類・魚類も多くは産みぱなしですが子供の世話する種では、どちらかの性だけが世話にあたります。

*一夫多妻の鳥~セッカやウグイスはオスがなわばりを持って、そこへメスが次々にやってきて、巣をつくり、ヒナを育てるがオスは子育てにまったく関与しない。オオヨシキリやミソサザイも一夫多妻だが、これらの種では状況に応じオスもかなりヒナの面倒を見ることが知られている。けれど複数のメスのヒナたちを平等に世話するかというとそうではなく、たとえば一夫二妻になった場合、オスは二番目のヒナの面倒はあまり見ない。

*一妻多夫の鳥~シギの仲間でよく出現するといわれている。ヒレアシシギ類は、その繁殖地のシベリアでは一妻多夫の関係を結んでいることが良く知られ研究も進んでいるが春と秋に日本を通過していくだけなのでその様子を日本では見ることが出来ない。日本で一妻多夫の様子が調べられているのがタマシギ。タマシギはフツウ四個の卵を産むが三卵目を産んで以降、つまり産卵三日目以降、メスは巣へあまりよりつかなくなり、四卵目を産むとメスは巣と卵を捨てて、次のオスを見つけ、つがいになって産卵する。抱卵やヒナの世話はオスの仕事でありオスはまかせられた卵をきちんと暖めてヒナをかえし、ヒナたちが大きくなるまで、連れ歩いて面倒をみる。

*つがいの絆~鳥たちのつがい関係について、まず第一に、ほぼ生涯にわたってつがいを続ける種類、二番目は数年間継続するつがい関係、三番目は少なくともその繫殖シーズン中はつがいの絆を守るもの、四番目は一回の繫殖ごとにつがいの相手を変えるもの、そして五番目は交尾だけしてわかれるものに区分される。タンチョウに代表されるツル類やハクチョウ、ワシ類及びアホウドリ類は一夫一妻の絆が固く配偶者の一方が死なない限り、つがい関係は何年にも続くと思われている。12年間コハクチョウのつがい関係が続いた記録が日本に残されている。鳥たちの離婚は意外に多く、その種のほとんどすべての個体が一つのタイプを撮るというような、固定的な種は少なく、状況に応じてその割合が変わるといったものがほとんどである。

*オシドリ夫婦は?~オシドリは夫婦仲の良い鳥だと思われているが、本当はオシドリの絆は一年限り。オシドリは他のカモ類と同じで、毎年秋になって繫殖シーズンが終わるとつがい関係を解消して、翌年の春には別の相手とつがいをつくるし、つがい中の浮気も見られる。

*親子の絆~一般に、小鳥のヒナは巣立ってしまうと、広い範囲に分散してしまって、その後の行動を追うのは容易ではなく巣立ち後の若鳥たちがどこで何をしているのかは、多くの鳥ではまだよくわかっていない。親子関係が翌年まで続く鳥としては、カラスがあげられる。ハシボソガラスのヒナが巣立つと、親子はなわばりの外に家族ねぐら、または数家族が集まって合同ねぐらをとるようになり、八月頃から大きな集団ねぐらに通うようになる。そして翌年の3月の繁殖期のはじめは前年の家族が崩壊しておらず、親子で集団ねぐらから繫殖なわばりへ帰ってくるといいます。そして親子が力を合わせて縄張りを守るが、巣を中心とした小さいなわばりが家族なわばりの中につくられ、その中には子ガラスは入れません。約一ヶ月の巣作りが終る頃、子ガラスはなわばりを去って姿をみせなくなる。二年以上にわてって親子関係が継続する鳥は、現在のところメキシコカケスなど一部の協同繫殖鳥でしか知られていません。

*巣立ち後のヒナ~巣立ち後のヒナがどんなふうに散っていくのか、オスのヒナとメスのヒナではどちらが遠くへ散っていくのかという研究によれば、圧倒的に多くの鳥では、メスの方が遠くへ散っていく。これは、雌雄が同じ所にとどまっていると近親者同士で結婚する確率が高くなり、遺伝的に好ましくない結果があらわれることを防ぐ意味があるとされている。この分散パターンは、哺乳類では全く逆の傾向であり、たとえばニホンザルで知られるように、オスがその出生地を離れて分散する。この傾向を哺乳類では一夫多妻が多いこと、鳥では一夫一妻が多いことと結びつけて論じられるが、その因果関係は良くわかっていない。

*ミルクをつくる~ハト類は自分でミルクをつくることができる(ピジョンミルク)。かれらのミルクは喉にあるソノウという袋の中でつくられ、ソノウ内壁の脂肪やタンパク質を多く含んだ細胞が剥離して、ミルク状の液体として分泌される。もう一つ、鳥の中でミルクを出せるグループとして、フラミンゴ類がある。フラミンゴミルクは、血のように真っ赤であるが、ピジョンミルクとそうかわりがない。どちらも栄養価は哺乳類のミルクと比べて遜色ない。

*刷り込み~ガンカモ科やキジ科の鳥のヒナは卵から孵化して、はじめてみた「動く物体」を自分の母親として認知し、その認識を一生変えることはない。この刷り込みには感受期があって、マガモの場合では孵化後13~16時間の間に生じると言われる。ローレンツが発見後もう40年になるのに刷り込みの意味はまだ十分に解き明かされていない。

*托卵~カッコウやホトトギスなど、自分の卵を他の鳥の巣の中に産み落として、その鳥に育てさせる托卵をする仲間は日本には4種類いるが、オオヨシキリやモズのように中には托卵を見抜き、その卵を巣外に放り出してしまう鳥もいる。このオオヨシキリやモズでさえ、ヒナがかえってしまうと、すっかり骨抜きになってしまってカッコウのヒナを育てる。この悲劇の原因は鳥たちの子育て行動がリリーサー(開発因)にもとづくいくつかの反射行動の組合せによっている。多くの鳥たちの給餌行動は、ヒナがくちばしをあけた時に、くちばしの中にある模様が見えて餌乞いの声が発せられると、それが自分のヒナであろうとなかろうが、無意識にその中へエサをつっこんでしまうという悲しい習性をもっていることによる。この傾向は、超正常刺激(大きいことはいいことだ)に対する反応によってさらに促進される。仮親よりも大きくなったヒナを他の鳥のヒナとは夢にも思わずに、大きく育った我が子と思って嬉々としてエサを運ぶのである。通常の場面ではとうていありえない刺激でも、より強い刺激の方が効果を持つのだ。托卵鳥のヒナが仮親のヒナよりずっと大きくて、声も大きいということは、托卵鳥にとってマイナスどころかプラスに作用していることになる。

                育雛中のタマシギのオス
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 まだまだ記憶にとどめるために、読後のメモをとっておきたいことが、たくさんあるがこのくらいにしておくこととする。
 もし、興味をひかれた方がいましたら、直接これらの著作を手に取られることをお奨めします。実は「一夫一妻の神話」は30年近く前に出版された本ですが、現在も新装版などが出版されているようですので入手可能と思われます。

「一夫一妻の神話」より
(本書について)
鳥の世界では今でも不思議が一杯です。たとえば、オシドリのように、これまで一夫一妻を守ると考えられていた鳥類の中でも多くの例外があることが明らかになってきました。現在では、世界各地の鳥学者の研究や多くのアマチュアの観察によって、一夫多妻、一妻多夫はもとより、一夫一妻の鳥で生じる婚外交尾、自分で繫殖をせずに他人の子育てを手伝うヘルパー、カモメ類のメス同士のペア、子殺しなどが明らかにされるとともに、社会生物学(行動生態学)的観点から、そうした現象が「なぜ」生じるのか、ということが解明されつつあります。この本では、そうした鳥の世界のいろいろな謎をー特に結婚生活と家庭生活に重点をおいてー鳥を知らない読者にもわかりやすく紹介し、いま、鳥の世界では何が面白いかをいきいきと伝えています。  






by GannkoOyazi | 2015-02-16 14:13
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